相続法改正のポイント⑤ ~配偶者居住権~

こんにちは! 横浜市金沢区の司法書士・行政書士の伊丹真也です。

本日は、以前のブログでご紹介した「40年ぶりの相続法改正!司法書士が教える相続法改正のポイント①」の中から、「配偶者の居住権」について、ご説明します。

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、相続の発生する前から配偶者が住んでいた自宅に、無償で住み続けていいという権利です。

配偶者居住権は、2020年4月から施行されます。今回の改正により、従来の「所有権」に加えて、「居住権」という新たな権利が配偶者に認められることになりました。

遺産分割協議で、次のように分割することはよくあります。

  • 遺産分割協議のときに、二次相続のことを考え、子どもが不動産を相続するケース
  • 自宅を配偶者が相続する代わりに、預貯金などを他の相続人が相続するケース

しかし、自宅を居住していない他の相続人が相続してしまうと、建物の所有権を相続しない配偶者は、建物からの退去を迫られるかもしれません

また、自宅を配偶者が相続し、預貯金を他の相続人が相続した場合、今後の生活費が足りなくなり、結果として自宅を売却しなければならない可能性もあります。

そこで、配偶者が「居住権」を取得することにより、自宅に住み続けることができ、かつ預貯金などもより多く取得することができるようになります。
※居住権は、従来の所有権より安く評価されるため。

配偶者居住権の種類

①配偶者短期居住権

配偶者短期居住権は、被相続人の遺産であった建物を配偶者が相続することができなくても、6ヶ月間は、配偶者が建物に居住し続けることができる権利です。

6ヶ月とは、遺産分割によって居住建物の帰属が確定した日、又は相続開始の時から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までの間です。

被相続人の配偶者は、建物の所有権を相続によって取得した相続人に対して、建物を無償で使用する権利を主張することが可能です。

配偶者短期居住権は、配偶者が、被相続人の自宅に相続開始の時において、無償で居住していたことにより、法律上当然に認められます。

②配偶者長期居住権(配偶者居住権)

配偶者長期居住権は、次の成立要件を満たすことにより認められる権利です。配偶者居住権は、期間の制限はありません。

配偶者居住権の成立要件

配偶者居住権は、次の要件が揃えば成立することになります。

①配偶者が、被相続人の遺産である建物に、相続開始の時に居住していたこと

加えて、以下の(1)(2)(3)のいずれかを満たすこと

(1)遺産分割によって、配偶者が配偶者居住権を取得する

(2)配偶者居住権が遺言によって遺贈の目的とされる

(3)被相続人と配偶者との間に、配偶者居住権を取得させる旨の死因贈与契約がある

また、当事者の合意のほかに、裁判所は次の場合に関しては、配偶者居住権に関して審判をすることが可能です。

  • 共同相続人間に、配偶者が配偶者居住権を取得することについての合意がある
  • 配偶者が配偶者居住権を取得したい旨を申し出た場合に、居住建物の所有者が受ける不利益を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき

配偶者居住権の注意点

配偶者居住権の有効期間は、配偶者の終身の間とすることも可能ですし、遺産分割協議や遺言によって配偶者居住権の有効期間を定めることも可能です。

ただし、配偶者居住権は売却することはできませんし、相続の対象ともなりません。故人の配偶者のみに認められた権利のためです。

配偶者居住権は、登記が必要になる

配偶者居住権を第三者に主張するには、登記をする必要があります。
遺産分割などで配偶者居住権を取得したのにそのままにし、所有権を取得した相続人がその不動産を第三者に売却したときは、配偶者居住権を主張することができません。

最後に

以前までの相続法では、故人の持ち家に同居していた配偶者が住み続けるには、配偶者が自宅を相続するという形が一般的でした。

しかし、自宅の不動産評価額が高額となった場合には、自宅を配偶者が相続することで預貯金の相続分が減り、老後に生活費が不足してしまうという事態が生じてしまいます。
実際にそういう事態に陥り、最終的に自宅を手放すというケースも少なくありませんでした。

本制度の創設により、遺産分割において預貯金等の相続分が増え、老後も無償で自宅に住み続けられるので、老後の生活も安心して過ごすことができるようになります。

配偶者居住権については、当事務所にお気軽にご相談ください。

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