相続法改正のポイント⑥ ~遺言書の保管制度~

横浜市金沢区の司法書士・行政書士の伊丹真也です。

本日は、以前のブログでご紹介した「40年ぶりの相続法改正!司法書士が教える相続法改正のポイント①」の中から、「遺言書の保管制度」について、ご説明します。

遺言書の保管制度とは

遺言書の保管制度とは、自筆証書遺言(自分で書いた遺言書)を、法務局に保管してもらう制度です。
遺言書の保管制度を利用することにより、家庭裁判所による検認手続きが不要となります。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自書し、押印することによって成立する遺言です。
自筆証書遺言は手軽に作成でき、また費用もかかりません。しかし、自筆証書遺言にはデメリットもあります。

自筆証書遺言のデメリット

様式の不備により、遺言書自体が無効になる

自筆証書遺言を作成するには、様々なルールがあります。そのルールを一つでも破ってしまうと、遺言書すべてが無効になるおそれがあります。

偽造や変造、破棄される可能性がある

自筆証書遺言は自分で保管する遺言のため、相続人にとって良くないことが書かれていた場合、その相続人によって偽造や変造、または破棄される可能性があります。

裁判所による検認手続が必要

遺言書を使って不動産の名義変更や預貯金の解約をする前に、裁判所に遺言書の検認をしてもらう必要があります。

そもそも発見されないことも

自筆証書遺言を書いたのはいいけど、どこにしまってあるかわからず、結局書いていないものと同じ扱いになることもあります。

遺言書保管制度の利用方法

遺言書の保管制度は、次のように申請することにより、利用することができます。

①自筆証書遺言書を作成する

まずは、自筆証書遺言を作成します。なお、遺言書の内容(不動産や預金の記入方法、遺言執行者の書き方など)は、法務局は確認しません。
ルールに基づいて作成されていれば、保管制度を利用することができます。

②保管の申請をする法務局を決める

申請することができる法務局は、次のとおりです。

  • 遺言者の住所地の管轄する法務局
  • 遺言者の本籍地の管轄する法務局
  • 遺言者が所有する不動産の所在地の管轄の法務局

なお、保管の申請ができる法務局は限られています。
詳しくは、こちらをご確認ください。

③保管の申請の予約をする

②で決めた法務局に、保管の申請をする日の予約を取ります。

④法務局に出向き、保管の申請をする

次の書類を持参し、法務局に保管の申請をします。

  • 遺言書
  • 保管申請書
    申請書は、こちらを参考に事前に作成してください。
  • 住民票(本籍、筆頭者の記載入り)
  • 顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 収入印紙 3,900円
    法務局やお近くの郵便局で購入できます。

なお、申請は遺言者本人のみとなっており、遺言者の親族などは代理人として申請はできません。また、司法書士や行政書士も代理人となることはできません。

⑤保管証を受け取り、保管の申請は完了です

遺言書、申請書、添付書類に問題がなければ、手続きは終了です。
手続き完了後、法務局から「保管証」を受け取ります。

この「保管証」には、次の事項が記載されています。

  • 遺言者の氏名
  • 生年月日
  • 手続きをした法務局の名称および保管番号

この保管証のコピーを、ご家族等に渡しておくと、万が一のときスムーズに手続きをすることができます。

遺言書保管制度により、デメリットを回避できる

自筆証書遺言は様々なデメリットがありますが、保管制度を利用することによりそのデメリットを回避できる可能性もあります。

様式の不備について

保管制度を申請するときに、法務局により、「日付及び氏名の自書」、「押印」、「訂正の方式」のチェックが行われます。チェックを受けることにより、様式の不備による無効は避けられます。

偽造、変造や破棄

遺言書の原本を法務局が保管するので、偽造や変造、破棄などのリスクは回避できます。
このリスクは保管制度を利用することにより、安心できます。

裁判所の検認手続が不要になる

保管制度を利用することにより、裁判所の検認手続は不要になります。これは大きなメリットになります。

最後に

遺言書の保管制度は、自筆証書遺言のデメリット・リスクを一部カバーしてくれる制度です。ただ、内容についての不備等は自分で作成した遺言書の場合、見つけることは難しいかもしれません。

司法書士に遺言書作成のサポートをおまかせください。ご希望にそった遺言書作成のお手伝いをさせていただきます。遺言書作成のサポートについては、下記をご覧ください。

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