横浜市金沢区の司法書士・行政書士の伊丹真也です。
本日は、以前のブログでご紹介した「40年ぶりの相続法改正!司法書士が教える相続法改正のポイント①」の中から、「遺留分制度の改正」について解説します。
遺留分とは
遺留分は、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障される遺産の取得分のことです。被相続人の子どもや配偶者、父母等は遺留分の権利を持ち、遺留分は遺言によっても奪うことはできません。
たとえば、遺言により遺産のすべてを長男に相続させたり(遺贈)、生前贈与により長男にすべて贈与していた場合に、他の相続人が遺留分を主張することにより一定の財産を取得できます。
現行では、「遺留分減殺請求権」と言いますが、改正により「遺留分侵害額請求権」と変わります。
遺留分が認めらる法定相続人
①配偶者
被相続人の夫や妻が相続人となる場合、遺留分があります。
②子どもや孫などの直系卑属
被相続人の子どもや孫も遺留分があります。
③父母、祖父母などの直系尊属
被相続人の父母、祖父母も遺留分があります。
④兄弟姉妹、甥姪は遺留分はありません
被相続人の兄弟姉妹、兄弟姉妹が先に死亡している場合に法定相続人となる甥姪には遺留分はありません。
遺留分の割合
遺留分は、誰が法定相続人となるかで割合が変わります。配偶者や子どもが相続人になる場合は、相続財産の2分の1が遺留分となります。また、直系尊属が相続人になる場合は、相続財産の3分の1が遺留分となります。
上記を遺留分の権利がある相続人の法定相続分に応じて分けます。具体的な遺留分については、次をご覧ください。
- 配偶者と子ども1人が相続人の場合 配偶者4分の1、子ども4分の1
- 配偶者と父母が相続人の場合 配偶者3分の1、父母6分の1
現在の遺留分について
現行法では、遺留分減殺請求権が行使されると、遺産のそのものを取り戻すこととなります。つまり、不動産や自社株などの株式もすべて相続人間で共有となってしまいます。
また、法定相続人に対する生前贈与は、特段の事情がない限り、何年前の贈与でも遺留分の計算対象となります。
そこで、今回の改正により、遺留分侵害額請求に代わり、遺留分をお金で返してもらうかたちに変わりました。
改正後の遺留分はどうなる?
遺留分侵害額請求権という名のとおり、遺留分権利者は、遺留分に相当する金銭の支払いを請求することのみができるようになります。つまり、不動産や自社株などの現物の返還を求めることはできなくなります。
また、法定相続人に対する生前贈与については、相続開始前10年間にされたものに限り、遺留分の計算対象となることになります。
遺留分侵害額請求権の時効
遺留分侵害額請求権は、相続開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ってから1年以内に遺留分を請求する必要があります。
被相続人が死亡したことと不公平な遺言や贈与があったことを知りながら1年間放置すると、遺留分を請求できなくなります。また相続開始や遺留分侵害を知らなくても、相続開始から10年経過したら「除籍期間」によって遺留分を請求できなくなります。
最後に
遺留分の請求が金銭に一本化されたことで、不動産や自社株などに複雑な共有関係が生じなくなるため、遺留分に基づく権利が主張しやすくなりそうです。
遺留分算定の基礎となる法定相続人に対する生前贈与に10年という期間の制限が設けられたことで、不動産や自社株等の生前贈与がよりしやすくなります。
遺言書や生前贈与をする前に、まずは司法書士など専門家にご相談ください。