相続法改正のポイント④ ~特別受益の持戻し免除の意思表示の法改正~

こんにちは。横浜市金沢区の司法書士・行政書士の伊丹真也です。

本日は、以前のブログでご紹介した「40年ぶりの相続法改正!司法書士が教える相続法改正のポイント①」の中から、「特別受益の持戻し免除の意思表示の法改正」について、より詳しくご紹介したいと思います。

特別受益の持戻しとは?

特別受益というのは、相続人が被相続人から、「遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与」を受けた場合のその遺贈又は贈与のことです。

共同相続人の中に特別受益を受けていた者がいる場合、これを考慮しないで法定相続分どおりに遺産を分けると不公平が生じます。

このような不公平を是正し、各相続人間の公平を図るために、特別受益分を考慮した上で具体的相続分を計算することを、「特別受益の持戻し」といいます。

例えば、遺産が6000万円、相続人が子どもでA、B、Cの3人、Aだけが生前に3000万円を受け取っていたとすると、まず6000万円の遺産にAが受け取った3000万円を加算して、6000万円+3000万円=9000万円が遺産であるとしたうえで、3人へ分配し(各法定相続割合3分の1)、1人3000万円を受け取ることになります。

特別受益控除後の具体的相続分としては、Aは0円(生前に3000万円受け取っているため)、Bは3000万円、Cは3000万円となります。

特別受益の持戻し免除の意思表示とは?

特別受益の持戻し免除の意思表示とは、被相続人が持戻しを希望しない意思表示をした場合に、持戻しを考慮しないで相続分を計算することをいいます。

持戻し免除の意思表示の方法に決まった方式はありませんが、言った・言わないの争いになりやすいので、書面などで形に残るようにしておきましょう。

被相続人が持戻しを希望しないという意思表示していた場合には、特別受益の持戻しをしなくてもいいのです。ただし、遺留分の制限は受けます。

配偶者に対する持戻し免除の意思表示の推定規定

相続法の改正により、『婚姻期間が20年以上の夫婦の一方の配偶者から他方の配偶者への居住用の建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、民法903条3項の持戻し免除の意思表示があったものとして推定する』規定を設けました。

今回の法改正がされる前は、長年夫婦で居住していた自宅について、夫が妻に自宅を生前贈与した場合においても、遺言で特別受益の持戻しの免除の意思表示をしていない限りは、自宅の生前贈与が特別受益として取り扱われていました。

今回の法改正において、結婚20年以上の配偶者に対する自宅の生前贈与については、特別受益の持戻し免除が推定されるとして、特別受益の取扱いを受けなくなりました(改正民法903条4項)。

生前贈与について持戻す期間を相続開始前の10年間に限定

相続法改正前は、遺留分に含める贈与の期間制限はなく、時期を問わず遺留分算定の基礎となる財産に含めるとされていました。そのため、相続人に対する特別受益に該当する贈与は、相続開始の何年前になされたものであっても、遺留分算定の基礎となる財産に含めました

今回の改正法では、相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間にされたものに限り遺留分の財産に含めることとなります。
これにより、相続開始より10年以上前に贈与された財産は、遺留分を算定するための財産に含まれないことになります。

なお、遺産分割協議においては、特別受益の持戻しについて、相続開始前の10年間に限られませんので、何年前に行われた贈与についても特別受益として計算します。

特別受益に関する法改正については、2019年7月1日より施行されます。

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